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JGAPで進化!富士山麓が生んだ究極の卵
[ 静岡県 株式会社あさぎり宝山ファーム ]

富士山の麓の恵まれた環境
静岡県富士市、標高900メートルに位置する株式会社マルフクの直営農場、あさぎり宝山ファーム。ここでは、富士山の雪どけ天然水を飲む鶏たちが、こだわり抜かれた環境で育てられ、唯一無二の卵が生み出されている。
農場では約10万羽の鶏を飼育し、その卵作りには特別なこだわりがある。焼津漁港で水揚げされたカツオを燻したカツオ節をはじめ、厳選した非遺伝子組み換えの飼料を与え、鶏の健康と卵の味に徹底的にこだわっている。13名のスタッフがチーム一丸となり、この品質を守り続けている。

より良い農場へ!飛躍のための決断
あさぎり宝山ファームが、食品安全、環境保全、労働環境、家畜衛生などに関する厳格な基準を満たした農場に与えられるJGAP認証を取得したのは2021年。それ以前に静岡県独自のGAP認証「しずおか農林水産物認証」を取得しており、さらなる飛躍を目指して第三者認証制度であるJGAPへの取り組みを決めた。
代表取締役の福﨑正展氏は、「養鶏場として客観的な評価を受ける手段がなかった。JGAPを取得すれば、しっかりとした基準で運営していることを証明できる」と、その意義を強調する。
農場長の瀧通昭氏は、「JGAPを取得すれば、農場の管理基盤が整い、従業員も安心して働けるようになると考えました」と語る。また、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の食材供給にGAP認証が必要だったことも、取得を後押しした要因の一つだった。

みんなで築いたJGAP認証
一般的に、JGAP取得には文書作成や記録管理といった業務が増え、慣れない作業が負担になることが多い。しかし、あさぎり宝山ファームでは、すでに「しずおか農林水産物認証」を取得しており、日々の作業を記録し、管理することが習慣化していたため、新たな取り組みが加わっても大きな負担にはならなかった。
従業員たちは、「これまでやってきたことを、より明確な基準のもとで継続すれば、農場全体の品質が向上する」という共通認識を持ち、一丸となって取り組んだ。この団結が、JGAP取得を支える重要な要因となった。
また、農場では月に一度、JGAP指導員を招き、ミーティングを実施。産卵率や鶏の健康状態の分析に加え、食品安全や家畜衛生についても徹底的に話し合い、さらなる改善を進めた。「コンサルの方が入ると、『よし、やるぞ!』と自然に前向きな空気が生まれる。いい刺激になります」と福﨑社長は語る。

現場の見える化で改革!農場運営が進化
JGAPの取得により、農場の運営は大きく進化した。以前は経験や勘に頼る場面も多かったが、データを基にした管理が可能になり、作業の標準化が進んだ。
福﨑社長は、「これまで現場の従業員たちはそれぞれの経験や勘で作業をしていました。それが悪いわけではないけれど、そのやり方だと、現場にいないと何がどうなっているのか分かりにくかった。しかし、JGAPの基準に沿って記録を取ることで、私のように普段農場にいない立場の人間でも、状況を把握しやすくなりました。現場の従業員と同じ意識で農場の改善を話し合えるのは、大きな変化ですね」と実感を語る。

商談が変わる!JGAPで信頼を勝ち取る
JGAP取得のもう一つの大きなメリットは、商談での信頼性が格段に向上したことだ。
「営業の際に『JGAP認証を取得している』と伝えると、それだけで信頼度が上がるんです。きちんとした管理のもとで生産していると自動的に認識されるので、商談がスムーズに進む。特に、品質にこだわる取引先ほど、この認証を重視する傾向があるので、ビジネス的にも大きなメリットになっています」と福﨑社長。
JGAP取得前から、基本的な管理はしっかりと行っていたつもりだった。しかし、実際に認証を取得することで、「できているか、できていないか」が明確になり、作業の統一基準が確立された。

世界に誇る品質!“日本一の卵”を目指す挑戦
JGAPの取得を経て、あさぎり宝山ファームが次に目指すのは、2022年に導入したエイビアリー鶏舎の拡大だ。エイビアリーとは、止まり木を設置した休息エリア、巣箱を設置した産卵エリア、砂遊びのできる運動エリア等を備えた平飼い鶏舎。鶏の行動がより多様になるようアニマルウェルフェアに配慮して開発された飼養システムだ。アニマルウェルフェアはJGAP畜産における必須の取り組みの一つである。
「最初は費用の面で難しいと感じましたが、それが逆にモチベーションになりました。どうせなら、日本で一番良い卵を作ろう、と決意しました」と福﨑社長は語る。
その徹底したこだわりは、すでに世界でも高く評価されている。2023年には、イギリスの「グッドエッグアワード」を受賞。これは、ケージフリー卵の生産と販売に積極的に取り組む企業に贈られる賞で、「福が、きた」というブランド卵が評価された。

今後も、アニマルウェルフェアと衛生管理の両面にこだわりながら、おいしさと品質を追求する姿勢は変わらない。
JGAPの取得を通じて、農場経営の基盤を強化し、安心・安全な卵作りを進めるあさぎり宝山ファーム。その挑戦は、まだ始まったばかりだ。

(取材年月:2024年6月)
※農林水産省「令和6年度 持続的生産強化対策事業(畜産GAP拡大推進加速化)」より