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農業に定年はあるの?― 60歳で社長を退くと決めた農場の話 ―
茨城県 株式会社光ファーム
JGAP認証農場では、JGAPを人材育成や組織づくり、経営改善など、さまざまな場面に活かしています。
今回ご紹介するのは、茨城県境町にあるJGAP認証農場・株式会社光ファームさん。
代表取締役の篠塚光一さんは、社員にこう宣言しています。
「60歳で、社長を退く。」
農業は定年のない仕事だと言われます。
体が動く限り続けられる。家業であればなおさらです。
それでも、あえて“終わり”を決めたのはなぜなのでしょうか。
地域の農地を守るという経営
光ファームは、利根川流域に広がる水田地帯で営農しています。
「地域の農地を守る」ことを理念に掲げ、できる限り農地を引き受け、営農を拡大してきました。
現在の作付面積は、水稲、そば、大麦、小麦あわせて延べ146ha
これを社員8名で耕作しています。
正社員5名の平均年齢は25.4歳。
全員が農業未経験からのスタートでした。
危機感から始まった組織づくり
正社員の雇用を始めた当初、課題は明確でした。
農村の「当たり前」が通じない。
仕事の流れが見えない。
何を目標にすればよいのか分からない。
ようやく育ったと思った社員が辞めてしまうこともありました。
このままでは、地域の農地を守り続けることはできない―。
そうした危機感から、光ファームは人材育成と組織づくりに本格的に取り組むことを決めます。
その中心となったのが、妻で専務取締役の篠塚朋子さんでした。
まず朋子さんが選んだのは、JGAP指導員資格の取得です。
それまでは「審査を受ける側」でしたが、取得を機に「指導する側」の視点でJGAPを学び直しました。
「審査を受ける側」から「指導する側」へ。
その立場の変化が、朋子さんの向上心と責任感を高めました。
JGAPの手法を“人づくり”に活かす
光ファームは2019年にJGAPを取得しています。
JGAPでは、
- 作業工程の明確化
- リスク評価
- 誰が・何を・どの水準で行うかの明確化
が求められます。
篠塚さんは、この手法を人材育成に応用しました。
品目ごとに、
- 機械技能が必要な仕事
- 管理能力が必要な仕事
を洗い出し、100項目以上をリスト化。
各項目を0〜3の4段階で評価し、
「誰が、どの仕事を、どのレベルでできるか」を見える化しました。
社員は何をどう頑張ればよいのかが分かるようになり、経営者はどこを指導すべきかが明確になりました。
評価を賃金と役職に結びつける
人事評価制度には「GAPの徹底」という項目を組み込み、
評価結果を賞与に反映させています。
さらに月1回の面談を実施し、達成度を確認。
評価点が上がれば役職も上がるキャリアマップを整備しました。
農業未経験で入社した社員が、4年間でリーダーへと成長するなど、定着率も向上しました。
「GAPは仕事の教科書」
朋子さんは日頃から、こう話しています。
「GAPは仕事の教科書」。
教科書とは、仕事を見える化し、標準化し、仕組みにするための土台。
その考え方は、施設設計にも表れています。
乾燥調整施設では、コンベアを天井から吊り、床を掃除しやすい構造に。
配管やコード類を整理し、清掃性を高めています。
マニュアル類は社員が収納ボックスを作成し、ラベル管理。
クラウド型農場管理システムを活用し、作業データを日々記録しています。
その結果、JGAP認証の更新審査では指摘事項ゼロを達成しています。
地域へ広がるJGAP
境町では出荷組合が設立され、篠塚さんは組合長も務めています。
JGAPの取得を推進し、2025年2月には農業者13名で団体認証を取得しました。
個社の取り組みが、地域へと広がっています。
なぜ60歳で退くのか
篠塚光一さんは現在54歳。
60歳で社長業を後継者に渡すと決めています。
自分がいなくても回る農場へ。
属人的な経営ではなく、仕組みで動く組織へ。
JGAPを共通言語として、次の世代が迷わない土台を整える。
その準備を、いま進めています。
農業に定年はあるのか。
答えは、人それぞれかもしれません。
けれど、次の世代へ経営を渡す準備は、今日からでも始めることができます。
光ファームにとって、その一歩がJGAPでした。
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