JGAPで築く、未来へつなぐサステナブルリゾート

[ 宮崎県 フェニックス・シーガイア・リゾート ]

美食と絶景が待つ、宮崎の楽園リゾート

宮崎県宮崎市の太平洋沿いに広がる「フェニックス・シーガイア・リゾート」。黒松林に囲まれたこのリゾートの中心には、全室オーシャンビューの「フェニックス・シーガイア・オーシャン・タワー」がそびえ立ち、美しい自然と極上のもてなしを提供している。

「日本でいちばん“美味しい”リゾートへ」というスローガンを掲げ、宮崎の豊かな食材を活かした料理を提供することにも力を入れている。その一環として、「JGAP認証農場」の食材を取り入れるサステナブルな取り組みが注目されている。今回は、JGAP認証を受けた宮崎大学の牛乳導入の経緯や、食の安全と持続可能性を追求する挑戦を紹介する。

G7がもたらした新たな出会い

2023年4月、リゾート内のシーガイアコンベンションセンターでG7宮崎農業大臣会合が開催された。各国の農業大臣を迎えるにあたり、シェフたちは「アニマルウェルフェア」「GAP認証」「GI」「見える化食材」などの基準を満たす食材の調達に取り組んだ。

特に宮崎牛の調達には苦労があった。当時、食材調達を担当していた購買部の外山氏は、「GAP認証取得農場で生産された宮崎牛を指定されていたが、G7開催時期に出荷できるものがなかなか見つからなかった」と語る。そんなとき、「宮崎大学なら提供できる」との情報が舞い込んだ。

宮崎大学住吉フィールドはリゾートから車でわずか5分。外山氏は「こんなに近くにJGAP認証の宮崎牛を生産する農場があることに驚いた」と振り返る。この出会いにより、無事にG7の食事メニューにJGAP認証の宮崎牛を提供することができた。

シェフを虜にした、究極の牛乳

G7をきっかけに宮崎大学とのつながりが生まれ、「もっとコラボレーションしたい」という声が社内で上がった。そこで、同大学の牧場を視察したところ、放牧され自由に過ごす牛たちの姿を目にし、 “サステナブルな食”の可能性を感じたという。

この牧場で生産された牛乳は、低温殺菌により生乳本来の風味が生かされ、すっきりとした味わいが特徴。これに感動したのが、エグゼクティブ・シェフ・パティシエの日吉氏。「この牛乳を使ってスイーツを作りたい」と強く思ったという。

現在、宮崎大学の牛乳はクラブフロアで提供され、ティータイムにはこの牛乳を使ったアイスが日替わりデザートとして登場することもある。また、期間限定でパフェなどのスイーツも提供され、宿泊者から高い評価を受けている。

安全・安心な食材の提供を目指して

「社会に必要とされる会社であり続ける」という理念のもと、リゾートではサステナビリティの一環として「安心安全な食の提供」に力を入れている。

その具体的な施策の一つが、認証を受けた食材の積極的な導入だ。JGAP認証農産物のほか、レインフォレスト・アライアンス認証のコーヒー豆、有機JAS & ASIAGAP認証の有機米を一部店舗で提供。さらに、県産野菜の積極的な使用を推進し、全国的にも知名度が高い綾町の有機野菜も取り扱っている。

このような取り組みの背景には、「安心安全で美味しいものを提供し続けたい」という想いがある。JGAPの基準は、日本の農業の現状や課題を踏まえて策定されており、その理念はリゾートの取り組みとも一致している。現在は、従業員教育にも力を入れ、社内報や研修会を通じて、認証食材やサステナビリティの重要性を伝えている。

「認証農場」を応援!リゾートの新たな使命

リゾートの食材調達は、単なる安全基準の遵守にとどまらない。「認証農場を応援したい」と語る外山氏は、認証取得・維持の大変さを理解し、生産者を支援しながら持続可能な社会の実現を目指している。

現在、日本国内でJGAP認証を取得している農場はまだ少ないため、調達は簡単ではない。しかし、それでも「少しずつ認証取得食材の比率を増やしていきたい」と外山氏は考えている。

また、宿泊者への認知を高めることも今後の課題だ。現在、宮崎大学の牛乳はその美味しさで人気を集めているが、JGAP認証であることは十分に伝えきれていない。今後は、宿泊者にもサステナビリティの取り組みを伝え、食を通じた環境への配慮を促していく計画だ。

未来を見据えた「おもてなし」のカタチ

リゾートでは、2022年にサステナブル推進部を設立し、「ひとも地球も、元気にするリゾートへ」を掲げ、環境と社会貢献に取り組んでいる。多様性を尊重し、女性活躍やLGBTフレンドリーな職場環境の整備を進める一方、カーボンニュートラルを目指し、黒松林やビーチの保全、食品ロス削減など環境負荷の軽減にも努めている。レストランから出る野菜端材を動物園に提供するなど、地域との連携も強化している。JGAP認証食材の導入をはじめとする取り組みは、持続可能な食文化を築く大きな一歩となる。「日本でいちばん美味しいリゾート」として進化を続けるこの場所で、訪れる人々に最高の食と体験を提供しながら、サステナブルな未来を切り拓いていく。

(取材年月:2024年12月)

※農林水産省「令和6年度 持続的生産強化対策事業(畜産GAP拡大推進加速化)」より