出荷作業場所で蚊取線香・電気蚊取器を使っても大丈夫ですか。

※過去の技術レターについて対応する管理点をJGAP2022に変更し、内容も修正しました。

管理点と適合基準:JGAP2022 C3.1,ASIAGAP 17.1(技術レター2011年3月号)

蚊取り線香・電気蚊取り器(マットタイプ、リキッドタイプ等)の使用により審査で不適合となることは基本的にありません。

関係機関、関連メーカーへの問い合わせ、関係文献・資料の調査を行ったところ、

1)作業場で蚊取り線香、電気蚊取り器を使用した場合の農産物への有効成分(ピレスロイド等)の付着量を測定したデータはこれまでなかった。

2)同様にこれらを使用した場合の農作物への有効成分付着量、残留量、安全性等について記載された文献、印刷物も存在しないことが分かった。

3)専門家の見方では、蚊取り線香・電気蚊取り器の通常の使用方法では、有効成分が0.01ppmを超えて作業場の農産物に付着・残留する可能性は低いとのこと。

4)ポジティブリストの対象物質は農薬、飼料添加物、動物用医薬品であり、蚊取り線香、電気蚊取り器に使用される家庭用殺虫剤(ピレスロイドで、農薬登録のないもの)はこれらに該当せず、ポジティブリスト制の規制対象とはいえない。

5)家庭用殺虫剤として使用され、かつ農薬登録のあるピレスロイドに天然ピレトリンがある。このピレトリンの残留基準はほとんどの青果物と一部の穀物において1ppmである(米や小麦などは3ppm)。

ということが分かりました。

関係機関、関連メーカー側にはデータや回答がなかったため、日本GAP協会として出荷作業場において蚊取り線香を使用した場合に農産物に付着する有効成分量のシミュレーションを行ったところ、通常の状態では作業場で蚊取り線香や電気蚊取り器を使用してもそれらに使用されている有効成分が0.01ppmを超えて残留する可能性は低いものと推定され、化学的に問題がないと考えられます。

従って結論としましては、

1.作業場において蚊取り線香や電気蚊取り器を使用しても、通常の使用方法であれば収穫物に残留基準を超える有効成分が残留する可能性は低い。通常の使用方法としては、農産物に接触しないように設置する。煙が農産物に直接あたり燻された状態になっていない。設置場所を特定(把握)する。使用時は密閉状態を避け適度の換気をする。蚊取り線香や蚊取りマット、蚊取りリキッドの交換は農産物のないところで行い、作業後は手洗いを十分にする、などが考えられます。

2.したがってこれらを作業場で使用することは可能です。ただし、作業場に長時間収穫物が保管され、その間これらを使用する場合は念のため、収穫物にビニールシート等をかけるなどの対策を講じてください。

3.蚊取り線香等の「使用上の注意」をよく読み、作業者への影響(労働安全衛生上の問題がない)を確認することも必要です。

4.上記を理解し、常識的な使い方をしている場合は、審査において蚊取り器の使用は不適合とはなりません。